トイレで流された汚水は、便器から見えなくなった後、どのような構造の配管を通って下水道へと流れていくのでしょうか。その排水管の構造は、建物の衛生環境を維持するために、法律(建築基準法)によって厳密なルールが定められています。まず、便器の真下には、床と便器を密閉し、水漏れや臭い漏れを防ぐための「フランジ」という接続部品が設置されています。便器はこのフランジを介して、床下にある「排水管」へと接続されます。戸建て住宅の場合、トイレから流れた汚水は、キッチンや浴室からの生活排水(雑排水)とは別の「汚水管」として、単独で屋外の「汚水桝(ます)」へと導かれます。この汚水桝は、排水管の点検や清掃のために設けられた中継地点であり、ここで生活排水と合流して、最終的に敷地外の公共下水道本管へと流れていきます。この排水管には、汚物がスムーズに流れるように、一定の「勾配(傾き)」をつけることが義務付けられています。一般的に、直径75mmや100mmの管が使われ、100分の1から100分の2(1メートル進むごとに1センチから2センチ下がる)の勾配が標準とされています。勾配が急すぎると水だけが先に流れて固形物が取り残され、逆に緩すぎると流れが悪くなり、つまりの原因となります。さらに、排水をスムーズにし、トラップの封水を保護するためには、「通気管」の設置が不可欠です。これは、排水時に管内の空気を外部に逃がし、管内が負圧になるのを防ぐための呼吸管のようなものです。この通気管がないと、他の場所で大量の水を流した際に、その吸引力でトイレの封水が引っ張られてなくなり、悪臭の原因となることがあります。このように、トイレの排水管は、見えない場所で計算された構造になっているのです。